■マコの傷跡■

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chapter 31



~ chapter 31 “病院” ~


どこの病院へ行けばいいのかわからず、とりあえずタウンページで総合病院を探した。
母がまだ看護婦を続けているから母に相談してみても良かったが
ただの怠け者なのだと言われるのが怖くて母には言えなかった。
症状を上手く説明する自信もなかった。

外科、内科、整形外科、消化器科、耳鼻科、眼科、小児科、産婦人科・・・。
どれも違うと思った。でも1つ心療内科というものだけ目についた。
その時初めて心療内科、という言葉を知ったのになんとなくこれかも、と思った。
病院に電話をし、おそるおそる聞いてみた。
「心療内科っていうのは、どういう症状をみてもらう所なんですか?」
電話の向こうで「精神病っていう程じゃない、ストレスとかで出る症状をみるんです。」と女の人が答えた。
よくわからないまま聞いていたら「あなたはどんな症状があるんですか」と聞かれた。
「理由もないのにイライラして、その感情が自分で抑えられない。
それに起きている間の事なのに、所々記憶が飛ぶんです。」
そう言うととりあえず1度来てみてくださいと言われ、予約を入れた。

予約を入れた日、病院に行き名前を呼ばれて診察室に入ると
座っている先生の後ろに3人、研修生らしき人が立っていて
そこで病状や家族構成や彼氏の事なんかを色々と聞かれた。
初めて会う先生にそんな話をするのも嫌だったのに後ろに立っている3人は
私の話を黙って聞きながらメモを取ったりしていた。

彼氏の話をしていると先生が「彼と結婚したら?」といきなり言うので
「彼と結婚するつもりはありません」と言うと「どうしてぇ~?」となんだかからかう様に言った。
せっかく病院に行ってみたけれど嫌な気分だったのでもう行くのはやめようと思った。
やっぱり私みたいな状態は病院に行っても意味がないんだ。
身体のどこが痛いとか、苦しいとかじゃない。
ただいつも朦朧とした感じでぼんやりとし、そうかと思うとイライラするだけだ。

自分がいけないのだ、と思った。
普通の人が普通に出来る事をするのがしんどいと言うと友達は
「みんなそうだけど、それでも頑張ってるんだよ」と言った。
頑張れないのは私が弱いせいだ。私はダメな人間なんだ。

そしてそのまま、病院に行った事さえ誰にも言えなかった。


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